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今日は父の命日

 入院から退院まであっという間だったが、その間いろいろなことがあった。

 普段仲が悪くて音信不通の妹と会い、そのご主人と子供(女)にも初めて会った。妹は父の介護保険の手続きをした関係で、まずはじめに病院からの連絡を受け取ったようだ。

 入院すると家族の誰かを「キーパーソン」に決めるそうで、ええかっこしいの妹は
「姉はガンなんです。病気で気が弱くなっているので私がなります」
 と言ったはいいが、父の状態のあまりの悲惨さに気が動転してしまい(そんな繊細さがあったのか?!)、
「くうみん、替わって!」
と言ってきた。

 看護師さんはキーパーソンをくうみんに交代すると聞くと、
「お姉さんは病気で気が弱くなっているって聞きましたけど、大丈夫ですか?」

 ケッ、バカにするな。

 私はモンスター癌患者くうみん様だ!!

「大した病気じゃないから大丈夫です」
 くうみんは答えたが、バンダナで隠したハゲ頭を見れば何の病気かだいたい察しが付く。

 病室で父は、ベッドに寝かされ、点滴されて、
「入院以来何も食べさせてくれない、水も飲ませてもらえない。何とかしてくれ」
 と訴えた。
「わかった。先生に言ってあげる」
 と言って、父の目の前で主治医に頼んだ。
「なんでもいいから食べさせてやってください!」

 その言い方がかなりのド迫力だったのか、主治医はドキッとした顔をした。
「ははは~、判りました、まあこちらへ」
 別部屋に行き、主治医と話をした。もう長くないなら点滴しなくていい、酸素も本人が嫌がるならしなくていい。食事はおかゆでも何でもいいから食べさせてほしい。と、こちらの希望を言った。
「判りました」
 主治医は答えた。

 食事は出してくれたものの、何回か食べているうちに誤嚥で体調が悪化。また絶飲食に逆戻りした。食べる元気はなくなったが、しきりに水を欲しがった。まくらもとには「絶飲食」のプレート…
「水、水」
「はい、水だよ」
 何とか水を飲ませてやりたいと、家から持ってきた割りばしに脱脂綿を巻き付けたものに水を含ませて飲ませた。

「何をしているんですか?!」
 看護師が咎めた。
「水を飲ませました」
 と答えた。

 すると今まで枕元に「絶飲食」と書いてあったのが、「飲水のみ可」に変更になった。???変なの。

 もう何日も生きられない人間に、何をこんなに苦しめるのか。本人が望んでいるなら、水くらい飲ませてもいいじゃないか。
「お父さん、もうちょっとよくなったら家に帰ろう。こんな所にいたら殺されちゃうよ」
「うん、そうだな」

 妹は、先生や看護師さんの言うことを聞くようになんて言っていたけど、死にゆく人間に守るべきものなど何もない。水くらい飲ませて何が悪い。

 死ぬ前にキャッシュカードの暗証番号を聞き出さなければ、と妹が何とか聞き出そうとしたがダメだった。

 そうこうするうちに父は5年前の今日、亡くなった。

 次は葬儀屋。

 病院でも紹介してくれるが、高いところが多いと聞いたので、この日のために選んでおいた「さくら葬祭」(実名)に電話。すぐに来てくれる。

 キャッシュカードの暗証番号聞き出しに失敗したので、ダメもとで通帳とハンコで、窓口でおろすことにした。2、3行あったが、どこも数万円程度の残高だったせいか、無事おろすことができた。

 年寄りはどんな貧乏人でも葬式代くらいは用意していると、年寄り相手の詐欺団は言ったそうだ。
 しかし、父は本当にキャッシュを持っていなかった。

 仕方なく定期預金を解約、一時立て替えた。
 家族だけのさびしい葬式が終わると、市役所の手続きをした。健康保険では、葬祭費5万円也が支給された。この後年金の手続きやら銀行の手続き、一切合財くうみんがした。

 妹は、くうみんが手続してかき集めた年金の未支給分他の小銭、労せずして半分持って行った。

 ずるい!

 ってことで…

 はい、これまでよ。



今日のくうみん
 今日は墓参りに行ってきた。
 父が眠っているのは走って30分くらいのお寺にある納骨堂だ。時々ランニングがてらお参りすることがある。でも、今日は自転車で行った。

 どうして子の納骨堂にしたかと言うと、近いからと言うのが一つと、5年前は、くうみん自身がいつ死ぬか判らないと思っていたので、納骨堂なら墓を守る人間がいなくなっても安心だと思ったからだ。

 マヌケなことに線香は持って行ったがライターを忘れた。墓前に手を合わせて、帰ってきた。
 
 墓に魂はいない。その人を思うことが供養。日蓮宗の尼僧、照玉師はそのようにおっしゃっておられた。だから今日はこの記事を書くのが父に対する供養だと思っている。

 仲たがいして十数年会わなかったこともある。
 父に会うようになったのは、いつ頃だっただろう。父が80を超えたくらいだろうか。

 遺品整理していると、筆まめだった父は手帳に、
「腰が痛い。咳が出て苦しい」
 とあった。腰が痛いのは、肺癌の骨転移だろうし、咳は肺がんの症状そのものだ。完璧な末期なのに、亡くなる2か月前に受けたがん検診では異常なし。

 やっぱりがん検診なんてあてにならないとの思いを強くした。






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ジャンル : 日記

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No title

病院は死にゆく人を苦しめることばかりしていますね。
家族のほうは医師の言うことを絶対視してしまうし。
苦しんでいるのは患者自身なんだけど・・・

友人の妹も、父親が亡くなった時、その財産をほとんど
持って行ってしまったそうです。

こういうとき、労ばかりかけさせられて、割を食うのは
圧倒的に長男長女ですね。

No title

お父様のご冥福をお祈りいたします。

私もお墓には誰もいないと思っているよ。
お墓は、日本人だからか習慣で行くけどねw
まぁ、敢えて言えば、亡くなった人の究極の遺品を収めているところかな。。

デリカです。

くうみんさん、こんばんは~
今日の日記の中に出てきたことですが、お父さんのお墓は走って30分くらいとのこと、ということはくうみんさんって行徳育ちの方なんですか?もしそうだとしたら文章の閉じ方が江戸っ子っぽいと思っていました。歯切れがいいというのでしょうか。
話は変わりますが、石油の原油価格はどこまで上がるかわからない状態で、おまけに年をとると灯油のポリ缶を運ぶのもホネですから、きりがいいときにエアコンにかえるのが賢いですね。

No title

キャッシュ番号って…生々しいっすね。けど大事なことですから誰かがやらねばなんですよね。
で、それを労せず持って行く妹さんがスゴイ!でも、権利あるから仕方ない事なのでしょかねぇ。
亡くなられてから5年。この記事を天国で読んでいるお父さんも笑っていることでしょう。(いや、呆れてるかも)
くうみん流供養…いいかも。

No title

今日の更新はないだろうと思っていました。
こうして話題にすることが供養になるでしょうね。

水も飲ませてはいけないとは!
本人が飲みたいと言ってるなら、飲ませていいと思いますけどね。
どう考えても臨機応変の対応に欠けてるとしか思えん!

最近は家族葬が増えているそうですが、前にも書いたかとも思いますが、私はずっと前から、相方(生きていれば)と子供くらいで送ってもらえばいいと思っています。
話題にされるのも厭なので、そっと消えて行きたいと本気で考えています。

No title

昨日、今日と記事を読んでいると、亡き父と母のことがいろいろ思い出されました。
くうみんさんみたいに克明に記録も記憶もしてないので、おぼろげですが。
お父様、ご命日にくうみんさんに思い出してもらって、こんなにいっぱい
書いてもらって、あちらで喜んでいらっしゃるでしょうね。

Re: No title

キララ様

> 病院は死にゆく人を苦しめることばかりしていますね。
> 家族のほうは医師の言うことを絶対視してしまうし。
> 苦しんでいるのは患者自身なんだけど・・・
>
 私も自分が病院で苦しめられた経験がなければ、医者の言うことは絶対だと思っていたことでしょう。
でも、今はそうはさせじ。

> 友人の妹も、父親が亡くなった時、その財産をほとんど
> 持って行ってしまったそうです。
>
> こういうとき、労ばかりかけさせられて、割を食うのは
> 圧倒的に長男長女ですね。

 長男長女はのんびりしてお人よしが多いです。次男次女以降は人当たりはいいけどちゃっかりと、要領いいです。
 うちの場合私よりおじさんが怒った。おじさんが怒ると怖いぞ。力はないが悪知恵の働く男。

Re: No title

 めろん様

> お父様のご冥福をお祈りいたします。
>
 ありがとうございます。

> 私もお墓には誰もいないと思っているよ。
> お墓は、日本人だからか習慣で行くけどねw

 全く行かないのもなんだかなと思うのは、習慣ですね。近い方が何かと便利だから、今の所にしたけど、埼玉にするという案もありました。

> まぁ、敢えて言えば、亡くなった人の究極の遺品を収めているところかな。。

 う~ん、なるほど。

Re: デリカです。

 delica様

> くうみんさん、こんばんは~
> 今日の日記の中に出てきたことですが、お父さんのお墓は走って30分くらいとのこと、ということはくうみんさんって行徳育ちの方なんですか?もしそうだとしたら文章の閉じ方が江戸っ子っぽいと思っていました。歯切れがいいというのでしょうか。

 父も私も、神奈川出身です。千葉に住んでもう25年以上になります。江戸っ子ぽいと言うのは光栄です。

> 話は変わりますが、石油の原油価格はどこまで上がるかわからない状態で、おまけに年をとると灯油のポリ缶を運ぶのもホネですから、きりがいいときにエアコンにかえるのが賢いですね。

 最近はあまり電気代のかからないエアコンもありますからね。重いもの持って腰痛を起こしたとか、火事になったとか、そういうこともあるからエアコンの方がいいかも。

Re: No title

 シロー様

> キャッシュ番号って…生々しいっすね。けど大事なことですから誰かがやらねばなんですよね。

 シロー様も親が訳わかるうちに聞いておいた方がいいですよ。認知進んだり、死んだ後では手続きが大変。

 もっとも半ボケの時はうまく暗証番号を聞き出しても、疑い深くなって勝手に番号を変えてしまうけど。よく失くすのでパスポートや印鑑証明を預かっても再発行してもらって、いたちごっこ。

> で、それを労せず持って行く妹さんがスゴイ!でも、権利あるから仕方ない事なのでしょかねぇ。

 いや~、もっとすごいことを企んだみたいだけど、それは阻止したのだ。おじさん大活躍。

> 亡くなられてから5年。この記事を天国で読んでいるお父さんも笑っていることでしょう。(いや、呆れてるかも)
> くうみん流供養…いいかも。

 父も変わり者だったけどね、今日はあまり悪いことは書かんでおこうと。

Re: No title

 旅彦様

> 今日の更新はないだろうと思っていました。
> こうして話題にすることが供養になるでしょうね。
>
 最近は週1回か2回の更新ですからね。楽天時代は毎日よく書いたなと。
 今回は供養のため、特別に。

> 水も飲ませてはいけないとは!
> 本人が飲みたいと言ってるなら、飲ませていいと思いますけどね。
> どう考えても臨機応変の対応に欠けてるとしか思えん!
>
 そうですよね。もうどうせ助からないんだから、望ものをあげてもいいじゃないですか。
 しかし、人間最後に欲しいのは山海の珍味でも酒でもなく、水なんですね。

> 最近は家族葬が増えているそうですが、前にも書いたかとも思いますが、私はずっと前から、相方(生きていれば)と子供くらいで送ってもらえばいいと思っています。

 私は知っている親戚も少ないし、住所も電話番号も判っているのはひとりだけ。家族葬にするしかなかったです。
 私の時は、そうですね。どうでもいいですが、おじさんは「海に流す」と言っています。

> 話題にされるのも厭なので、そっと消えて行きたいと本気で考えています。

 野生動物みたいですね。

Re: No title

 mamatam様

> 昨日、今日と記事を読んでいると、亡き父と母のことがいろいろ思い出されました。
> くうみんさんみたいに克明に記録も記憶もしてないので、おぼろげですが。

 結構記録しています。旅先の食事から、葬式代まで。

> お父様、ご命日にくうみんさんに思い出してもらって、こんなにいっぱい
> 書いてもらって、あちらで喜んでいらっしゃるでしょうね。

 生前の行いを悔い、徳を積むべく修行をしている…と信じたい。

うう(/TДT)/…

こんばんわ。

なんだかいろんな事を考えさせられました。アメリカの、尊厳死した女性のこととか…。

以前、立花隆さんが「癌で死ぬのは幸せかもしれない」と、週刊文春の会談で言ってたんです。(もしかしたら対談相手が言ったのかも)あの方もがん患者さんですから。

ピンピンコロリはゴメンだと。やり残したこと全部やってから死ぬのがいいと。

それに対する正解はないと思うんです。ひとそれぞれだから。。。

うーん、何言いたんだかわからなくなってきました。
でも、最後にお父様のお世話をできたことは、師匠にとって良かったことのような気がします。

もし気を悪くしたらすみません(`;ω;´)

Re: うう(/TДT)/…

phiro様

> こんばんわ。
>
> なんだかいろんな事を考えさせられました。アメリカの、尊厳死した女性のこととか…。
>
 アメリカの彼女の死には少し違和感を感じているのですよ。ブログに書こうと思っていますが、父の命日優先。

> 以前、立花隆さんが「癌で死ぬのは幸せかもしれない」と、週刊文春の会談で言ってたんです。(もしかしたら対談相手が言ったのかも)あの方もがん患者さんですから。
>
 立花さんはそう言ったと思います。私も癌で死ぬのが一番幸せだと思います。なぜなら、ホスピスを利用できるのは、癌患者とエイズ患者のみ、エイズ患者には偏見があるけれど、癌患者にはほとんどない、死ぬ直前まで元気でいられる…などです。

> ピンピンコロリはゴメンだと。やり残したこと全部やってから死ぬのがいいと。
>
 やりたいことをやるのには、命には限りがあるということを認識しなければできないよ。

> それに対する正解はないと思うんです。ひとそれぞれだから。。。
>
 そうね、正解はないねえ。だけど自分ならこう、と言うのはあります。

> うーん、何言いたんだかわからなくなってきました。

 ゆっくり考えてください。

> でも、最後にお父様のお世話をできたことは、師匠にとって良かったことのような気がします。
>
 世話をできたというよりも、「こんなとこ、早く出て行こう」と、夢を見させたのが良かったかなと。

> もし気を悪くしたらすみません(`;ω;´)

 大丈夫、気を悪くするなんて、ないよ。コメントいつもありがとうね。

どうなるんだろう

アタシの母親が死ぬと、どんな感じなんだろう。
手続きは、たぶん、長女のアタシだろう。
墓は、どうしよう。

水を望んだら飲ませてあげようとするだろうか。
それとも、冷酷に微笑むだけだろうか。

その時にならないとわかんないな。
でも、くうみんさんのブログ読んで考えさせられたよ。

今は妹と仲が良いけれど、、、、喧嘩するのはいやだな。

Re: どうなるんだろう

きたあかり様

> アタシの母親が死ぬと、どんな感じなんだろう。
> 手続きは、たぶん、長女のアタシだろう。

 長女は大変。長男がいたとしても(特に末っ子長男)、面倒なことは長女が押し付けられるってよくあること。

> 墓は、どうしよう。

 そのままって訳にも行かないから、母上の実家の墓に入れてもらうか、
もしくは納骨堂でしょう。

> 水を望んだら飲ませてあげようとするだろうか。
> それとも、冷酷に微笑むだけだろうか。
>
 死ぬとき位は…と思いますが、人の心の内を他人がとやかく言えません。
「先生が水はだめって言っているでしょ」
 と言うとか。

> その時にならないとわかんないな。
 
 私もその時にならないと判らない人、います。

> でも、くうみんさんのブログ読んで考えさせられたよ。
>
> 今は妹と仲が良いけれど、、、、喧嘩するのはいやだな。

 うちはきょうだい仲悪い。バラバラ。だから喧嘩して当たり前。
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