スルタンアフメット地区で会った若いイケメンと二人のオヤジ
スルタンアフメット地区は、旧市街でたくさんの見どころがひしめき合っている。
その一つ、地下宮殿に行こうとした。ここが入り口かな、と覗いていると、
「そこは出口ですよ」
と言う日本語が聞こえた。
黒髪で髭を生やした若いイケメンだった。
「入り口はこっちです」
言われるままに連れ立って歩いた。
「出身はどこですか?」
「あ~、日本です」
「日本のどこですか?」
「いえ~」
あまりのも唐突だったので、ちょっと身構えた。
「あ、日本に住んでいないんですか?」
「あの~」
彼はちょっとイラついてきたようだ。
「知らない人にどこから来たのかを言うのはちょっと」
「言いたくなければいいです。ここに並んでください」
そう言い捨てて彼は元来た道を戻って行った。
くうみんが並んでいると、どこかの国の添乗員と思われる人が、くうみんに向って何か言っている。怒っているようだ。
そのうち、係員がやってきて、
「チケットは持っていますか?」
と、聞いてきた。
「いいえ、持っていません」
「ここはチケットを持っている人の列です」
「チケットは、どこで買えばいいんでしょう」
「あっちです」
「どうも」
どうやら、あの添乗員はくうみんが団体に付いて行って不正に入場しようとしていると思ったらしい。
チケット売り場の行列に並びなおして、チケットを買い、入場口に向かった。
かのイケメンは、くうみんが出身を答えないのに腹を立てて、違う列に並ばせたらしい。
きっと、親切に案内したのに、それを無にするようなことをしてしまったから、不快に思ったんだ。
悪いことをしてしまった。
くうみんはそう思いつつ、地下宮殿を観光した。
次の日、アヤソフィア聖堂に入場しようとしたが、混んでいるので躊躇した。そこにオヤジが現れた。
「日本人ですか~?」
「はい」
なんですか、日本の会社に勤めているとのことだった。
「うちの会社、すぐ近くです。来てみませんか?」
「いえ、今からちょっと、博物館を見に行く予定ですので」
「そうですか、お気をつけて」
目当ての博物館を見学して、またアヤソフィア聖堂前に行った。
見学の行列はもっと長くなっており、なんでさっき入らなかったんだろうと後悔した。
「こんにちは、おひとりですか~」
今度はさっきと違ったおやじが声をかけてきた。一日に3人も!
アヤソフィア聖堂に入ろうと思ったら、こんなに長い行列でどうしようかと思っているんです。今日は無理でしょうかね。
「まだ日があるなら、今日はやめておいた方がいいかも知れない」
くうみんとそのオヤジはそこでしばらく雑談を交わした。
かのイケメン青年に不快な思いをさせてしまい、申し訳なく思っていることも述べた。
「日本語話せる人、そんなに悪い人はいないよ。多分知っている人だと思う、誰だろう?」
彼は「キリンをかいている」と言った。キリンをかく?画家かしら?
くうみんの中学時代の美術の先生が画家で、画家と言うのは自分のテーマを持っているものなんだ。僕のテーマは鳥だよ、と言っていたのを思い出した。
この人の画家としてのテーマはキリンなんだ、きっと。
「日本にも仕事でよく行くよ。時間があったら、うちの会社に来てみませんか?日本人がちょくちょく来ているんだ」
くうみんは後をついていった。その間、歳を聞かれたり、仕事を聞かれたりした。彼は52歳だそうだ。くうみんは一億歳だと答えた。
「日本人は若く見えるね」
にぎやかな通りから路地に入ると、そこには猫がたくさんいた。
建物の一つに入っていくと、入り口近くに男性が一人。オヤジはその男性に向かって、手を振った。
「トルコ式のお近づきのしるしに、チャイをごちそうしましょう」
おやじは電話で何事か話をしてから、くうみんの前に座った。
さっきの男性がチャイを持って来て、くうみんとオヤジの前に置いた。
続く
面白い、応援、印象的…感じるところがあればクリックしてください。励みになります。Ctrlキーを押しながら、ポチポチと続けて押せば画面が飛びません。
↓


にほんブログ村

その一つ、地下宮殿に行こうとした。ここが入り口かな、と覗いていると、
「そこは出口ですよ」
と言う日本語が聞こえた。
黒髪で髭を生やした若いイケメンだった。
「入り口はこっちです」
言われるままに連れ立って歩いた。
「出身はどこですか?」
「あ~、日本です」
「日本のどこですか?」
「いえ~」
あまりのも唐突だったので、ちょっと身構えた。
「あ、日本に住んでいないんですか?」
「あの~」
彼はちょっとイラついてきたようだ。
「知らない人にどこから来たのかを言うのはちょっと」
「言いたくなければいいです。ここに並んでください」
そう言い捨てて彼は元来た道を戻って行った。
くうみんが並んでいると、どこかの国の添乗員と思われる人が、くうみんに向って何か言っている。怒っているようだ。
そのうち、係員がやってきて、
「チケットは持っていますか?」
と、聞いてきた。
「いいえ、持っていません」
「ここはチケットを持っている人の列です」
「チケットは、どこで買えばいいんでしょう」
「あっちです」
「どうも」
どうやら、あの添乗員はくうみんが団体に付いて行って不正に入場しようとしていると思ったらしい。
チケット売り場の行列に並びなおして、チケットを買い、入場口に向かった。
かのイケメンは、くうみんが出身を答えないのに腹を立てて、違う列に並ばせたらしい。
きっと、親切に案内したのに、それを無にするようなことをしてしまったから、不快に思ったんだ。
悪いことをしてしまった。
くうみんはそう思いつつ、地下宮殿を観光した。
次の日、アヤソフィア聖堂に入場しようとしたが、混んでいるので躊躇した。そこにオヤジが現れた。
「日本人ですか~?」
「はい」
なんですか、日本の会社に勤めているとのことだった。
「うちの会社、すぐ近くです。来てみませんか?」
「いえ、今からちょっと、博物館を見に行く予定ですので」
「そうですか、お気をつけて」
目当ての博物館を見学して、またアヤソフィア聖堂前に行った。
見学の行列はもっと長くなっており、なんでさっき入らなかったんだろうと後悔した。
「こんにちは、おひとりですか~」
今度はさっきと違ったおやじが声をかけてきた。一日に3人も!
アヤソフィア聖堂に入ろうと思ったら、こんなに長い行列でどうしようかと思っているんです。今日は無理でしょうかね。
「まだ日があるなら、今日はやめておいた方がいいかも知れない」
くうみんとそのオヤジはそこでしばらく雑談を交わした。
かのイケメン青年に不快な思いをさせてしまい、申し訳なく思っていることも述べた。
「日本語話せる人、そんなに悪い人はいないよ。多分知っている人だと思う、誰だろう?」
彼は「キリンをかいている」と言った。キリンをかく?画家かしら?
くうみんの中学時代の美術の先生が画家で、画家と言うのは自分のテーマを持っているものなんだ。僕のテーマは鳥だよ、と言っていたのを思い出した。
この人の画家としてのテーマはキリンなんだ、きっと。
「日本にも仕事でよく行くよ。時間があったら、うちの会社に来てみませんか?日本人がちょくちょく来ているんだ」
くうみんは後をついていった。その間、歳を聞かれたり、仕事を聞かれたりした。彼は52歳だそうだ。くうみんは一億歳だと答えた。
「日本人は若く見えるね」
にぎやかな通りから路地に入ると、そこには猫がたくさんいた。
建物の一つに入っていくと、入り口近くに男性が一人。オヤジはその男性に向かって、手を振った。
「トルコ式のお近づきのしるしに、チャイをごちそうしましょう」
おやじは電話で何事か話をしてから、くうみんの前に座った。
さっきの男性がチャイを持って来て、くうみんとオヤジの前に置いた。
続く
面白い、応援、印象的…感じるところがあればクリックしてください。励みになります。Ctrlキーを押しながら、ポチポチと続けて押せば画面が飛びません。
↓


にほんブログ村
- 関連記事
-
- スルタンアフメット地区で会った若いイケメンと二人のオヤジ その続き (2023/06/01)
- スルタンアフメット地区で会った若いイケメンと二人のオヤジ (2023/05/31)
- イスタンブール到着 (2023/05/29)
スポンサーサイト