おじさん 合格までの日々 その二
税理士になるには、試験を受けることの他、
・一定の期間税務署に勤務する。
・大学院で税法、会計学に関する科目を習得することで、試験の免除を受ける。
などの方法がある。
税務署上がりの税理士は結構知っているけど、大学院での税理士は、くうみんの知る限りでは、2人だけ。まあ、どうでもいいことだが。
おじさんは、週に何回か、専門学校に通うので、その日は帰りが11時近くになることもあった。
くうみんはそんなときは、掃除や洗濯をすることもあったし、会社の人とはあまりそりが合わなかったから、出身大学の近くのスナックに、一人で飲みに行くこともあった。
そこは在学中のサークル仲間や後輩がいて、なかなか楽しい所だった。
しかし、どうもそこの店主はあとで思うと、くうみんを好きではなかったような気がする。
「ダンナがいるのにふらふら遊び歩いて」
などのような思いがあったのかも知れぬ。
ゴールデンウィークを過ぎ、8月上旬に試験が行われる。それが終わると、学校も休みになるので、たまさかの夏休みを楽しむ。温泉に行ったり、山に登ったり、海外も、当時はあまり長くは休めなかったから、グァムによく行った。
グァムに行くときは、なるべく安いツアーを選ぶのだが、平日なら半額くらいで行けるのにと、恨めしかった。今はこっちの人間だ~。
そして、実家のご機嫌伺いに。
まずおじさんの実家に行って2泊ほどする。次にくうみんの実家に行くのだが、これが問題なのだった。
くうみん母が嫌味ばかり言うのだ。
「まあ、おじさん!いいわねえ、地位もなくお金もなく、気楽よね~」
おじさんの前ではこのようなことを言い、おじさんのいないところでは、
「私はあの男、大嫌い!」
「今のうちに戻ってくれば、いいのを紹介するわよ」
などなど。
さらに、妹夫婦(当時、夫は某大企業社員)とかち合うと、露骨な差別をするのだった。
おじさんはもちろん、くうみんも、針の筵だった。
某年9月のある日、こんな電話がかかってきた。
母「ウソつき!ウソつき!ウソつき~~~~!」(これを30回)
くうみん「…どうしたの?」
母「ウソつき!ウソつき!ウソつき~!」(これをさらに30回)
くうみん「…」
母「またダメだったんじゃないの!!9月になればって言ってたのに!ウソつき!」
くうみん「9月になれば?何のことよ」
母「このウソつき!ウソつき!」(30回言って電話が切れる)
そして、勉強の終わったおじさんが、帰って来た。
「おっかあから、こんな電話があったんだよ」
おじさんはため息をついた。
「発表は12月だってこと、まだ憶えていないのかよ」
「本当にねえ!もう長いのに!あっはっは~!」
「…」
「あ…、ごめん」
そしてその年の12月、合否を知らせる封筒が届いた。おじさんは帰っていない。透かして見ると、
「合格しました」
という文言が見えた。
ん!これは!!
今までは「合格した」という文言が見えた。そして続くのは、
「あなたは合格した科目がありませんのでお知らせします」。
いつもと違う!!
急いで封筒を開けた。
そして今回続くのは、
「あなたは下記の科目に合格しましたので、お知らせします」
おお!法人税法合格じゃ!!
すぐにおじさんの実家に電話した。義母が出た。
「おじさん、法人税法合格しました!」
「あら、よかったわ~」
涙ぐむ義母。
そしてくうみんの鬼母にも連絡した。
「受かったよ~、法人税」
「えっ!」
「だから、受かったって」
なぜか呆然とするだけで、うれしそうではない。うれしくないのかしら。
後で知ったこと。
9月のある日、母は当時ハマっていた「神様」の所へ行った。この方は受験の神様で、合格するかしないかが分かると言う。
他の人には、
「がんばれば受かります」
なのに、おじさんだけは、
「ダメです、ムラッケが災いして不合格です」
そして例のウソつき連発事件になったらしい。
合格の結果を知った母は、くうみんの電話を切り次第、神様の所に電話をかけて、言ったそうだ。
「このウソつき!」
この年は、おじさんの通っていた専門学校では、長年不合格だった生徒が合格したという。講師の皆さんも、
「不良在庫がやっとはけた」
と、喜んでいたそうだ。
もちろん、おじさんの喜びはひとしおだった。おじさんは合格を知って、泣いた。
翌日、勤めている事務所に出勤したが、あまり露骨に喜ぶ顔を見せるのは、不合格だった人に対して失礼だと、マスクをかけて仕事をしたそうだ。自分がずっと不合格の立場だったからね。
「おじさん、横から見ると笑っているのバレバレですよ~」
事務所の人に指摘されたそうだ。
法人税法一科目に10年を費やしたが、あと残った、相続税、国税徴収法はするすると合格。
しかしな、これはスタートであって、ゴールではない。これからが大変なのだよ。
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・一定の期間税務署に勤務する。
・大学院で税法、会計学に関する科目を習得することで、試験の免除を受ける。
などの方法がある。
税務署上がりの税理士は結構知っているけど、大学院での税理士は、くうみんの知る限りでは、2人だけ。まあ、どうでもいいことだが。
おじさんは、週に何回か、専門学校に通うので、その日は帰りが11時近くになることもあった。
くうみんはそんなときは、掃除や洗濯をすることもあったし、会社の人とはあまりそりが合わなかったから、出身大学の近くのスナックに、一人で飲みに行くこともあった。
そこは在学中のサークル仲間や後輩がいて、なかなか楽しい所だった。
しかし、どうもそこの店主はあとで思うと、くうみんを好きではなかったような気がする。
「ダンナがいるのにふらふら遊び歩いて」
などのような思いがあったのかも知れぬ。
ゴールデンウィークを過ぎ、8月上旬に試験が行われる。それが終わると、学校も休みになるので、たまさかの夏休みを楽しむ。温泉に行ったり、山に登ったり、海外も、当時はあまり長くは休めなかったから、グァムによく行った。
グァムに行くときは、なるべく安いツアーを選ぶのだが、平日なら半額くらいで行けるのにと、恨めしかった。今はこっちの人間だ~。
そして、実家のご機嫌伺いに。
まずおじさんの実家に行って2泊ほどする。次にくうみんの実家に行くのだが、これが問題なのだった。
くうみん母が嫌味ばかり言うのだ。
「まあ、おじさん!いいわねえ、地位もなくお金もなく、気楽よね~」
おじさんの前ではこのようなことを言い、おじさんのいないところでは、
「私はあの男、大嫌い!」
「今のうちに戻ってくれば、いいのを紹介するわよ」
などなど。
さらに、妹夫婦(当時、夫は某大企業社員)とかち合うと、露骨な差別をするのだった。
おじさんはもちろん、くうみんも、針の筵だった。
某年9月のある日、こんな電話がかかってきた。
母「ウソつき!ウソつき!ウソつき~~~~!」(これを30回)
くうみん「…どうしたの?」
母「ウソつき!ウソつき!ウソつき~!」(これをさらに30回)
くうみん「…」
母「またダメだったんじゃないの!!9月になればって言ってたのに!ウソつき!」
くうみん「9月になれば?何のことよ」
母「このウソつき!ウソつき!」(30回言って電話が切れる)
そして、勉強の終わったおじさんが、帰って来た。
「おっかあから、こんな電話があったんだよ」
おじさんはため息をついた。
「発表は12月だってこと、まだ憶えていないのかよ」
「本当にねえ!もう長いのに!あっはっは~!」
「…」
「あ…、ごめん」
そしてその年の12月、合否を知らせる封筒が届いた。おじさんは帰っていない。透かして見ると、
「合格しました」
という文言が見えた。
ん!これは!!
今までは「合格した」という文言が見えた。そして続くのは、
「あなたは合格した科目がありませんのでお知らせします」。
いつもと違う!!
急いで封筒を開けた。
そして今回続くのは、
「あなたは下記の科目に合格しましたので、お知らせします」
おお!法人税法合格じゃ!!
すぐにおじさんの実家に電話した。義母が出た。
「おじさん、法人税法合格しました!」
「あら、よかったわ~」
涙ぐむ義母。
そしてくうみんの鬼母にも連絡した。
「受かったよ~、法人税」
「えっ!」
「だから、受かったって」
なぜか呆然とするだけで、うれしそうではない。うれしくないのかしら。
後で知ったこと。
9月のある日、母は当時ハマっていた「神様」の所へ行った。この方は受験の神様で、合格するかしないかが分かると言う。
他の人には、
「がんばれば受かります」
なのに、おじさんだけは、
「ダメです、ムラッケが災いして不合格です」
そして例のウソつき連発事件になったらしい。
合格の結果を知った母は、くうみんの電話を切り次第、神様の所に電話をかけて、言ったそうだ。
「このウソつき!」
この年は、おじさんの通っていた専門学校では、長年不合格だった生徒が合格したという。講師の皆さんも、
「不良在庫がやっとはけた」
と、喜んでいたそうだ。
もちろん、おじさんの喜びはひとしおだった。おじさんは合格を知って、泣いた。
翌日、勤めている事務所に出勤したが、あまり露骨に喜ぶ顔を見せるのは、不合格だった人に対して失礼だと、マスクをかけて仕事をしたそうだ。自分がずっと不合格の立場だったからね。
「おじさん、横から見ると笑っているのバレバレですよ~」
事務所の人に指摘されたそうだ。
法人税法一科目に10年を費やしたが、あと残った、相続税、国税徴収法はするすると合格。
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