寂しさを感じるのはこんな時
くうみんの入っているフィットネスクラブで、ランニング大会があるという。トラックを一周して次の人にリレーしていく。これを繰り返して3時間、どれだけ走れるかを競うのだという。
一月後には名古屋でハーフを走る予定。ちょうどいいウォーミングアップになるじゃないの?!そう思って参加を申し込んだ。
当日は競技場の最寄り駅で待ち合わせをすることになっていた。時間通りに行くと、インストラクターが一人、待っていた。聞くと他のメンバーはすでに会場に行っているという。
「すみません、遅くなって」
「いえ、まだ時間内ですから」
二つあるチームのうち、くうみんは遅いチームに割り振られていた。でも、きっと活躍できると信じ込んでいた。トラック一周800メートル。4分前後で走れるだろう。
「昔は速かったんですけどね」
「いえ、記録よりも楽しめばいいんですよ」
ふっふ、後になって彼は、私の速さに目を丸くするであろう。と、この時は思っていた。

マラソン会場
会場に着くと社長挨拶や、ウォーミングアップをしていよいよスタート。くうみんは3番走者だ。
前の人からタスキを渡され、くうみんはひた走った。しかし、おかしい。何でこんなに息が苦しいんだろう?800メートルという短い距離を走るというのに、途中から明らかに失速して行った。
その後の走りはひどいものだった。はじめのうちは一周5分くらいで、これでもひどいと思ったが、そのうち6分近くかかるようになった。年を取るってこういうものか?
抗がん剤の影響で、術後2年目に走ったハーフマラソンは2時間以上かかった。自己ベストは1時間36分30秒のくうみんは、それまで、2時間以上かかる人って歩いているんじゃないかしら?など思っていたのに。
自分で練習を工夫して、フルマラソンはサブフォーに復帰したけれど…
抗がん剤の影響は克服できても、年を取るのは克服できない。考えてみれば、これは自然の摂理。年を取ればどんな名選手も、引退を余儀なくされる。
おお!そうだ!池江瑠花子ちゃん!ということで、白血病は克服できるぞ!今は治療に専念するように!
さて。
くうみんは、おのが遅さに非常なショックを受けた。しかし、さらなる試練がくうみんを襲うことになる。
みんなと一緒に連れ立って帰った。電車に乗り込むと、席が空いていたので思わず座った。しかし、みんな向こうで立っている。誰もこっちに来ない。
いいわよ、私だって一人を楽しむことのできる大人なんだから…くうみんは荷物の中から本を出して読んだ。アメリカの小説、「緋文字」だ。アメリカでは推薦図書になるようなポピュラーな小説らしい。
みんなでこの後打ち上げをするという。食事の支度もしていないし、参加することにした。風呂に入って待ち合わせ場所に行くと、もうみんなが待っていた。3分ほど遅れたので、若干一名の目が厳しかった。すまん、遅れたのは悪かった。
参加者は7人で、近所のチェーン店の居酒屋に入った。席は隣同士で二つに分かれていたが、一つの席が先に埋まった。くうみんと女性イントラはその隣の席に向かい合わせで座った。遅れてきた男性会員は、その女性イントラの隣に座った。
くうみんの隣だけ人がいない…イントラと、オバ(あ)さん会員ならば、イントラの隣に座るのが自然と言うもの。でも…
初対面の人とも、気後れせずに自分から積極的に話の中に入って行くのも大事だよ…そういうアドバイスを某女からいただいたことがあったので、くうみんは、話に耳を傾け、あいづちを打った。なるべく話の中に入って行こうとした。
しかし、話がかみ合わない。
くうみんは断トツの年上で、次はアラフォーと思われる女性会員、あとは20代前半や、アラサーと思われる人ばかりだ。
フィットネスクラブのイントラと会員の話題は、やはり体をどうやって作っていくかということ。
「胸の筋肉としては前鋸筋が大事です」
など、アラサーのイントラが話し始める。この人は1987年生まれだという。くうみんが結婚したのが1985年なので、ちょうどこれくらいの子供がいるはずだ。しかし、彼はこの中でも年上の方。
前鋸筋か?そう言えばブルース・リーの前鋸筋はすごいって言ってたな?
前鋸筋と言うのは、胸の外側、わきの下あたりに付いている筋肉だ。くうみんはブルースリーの名前を挙げた。
「誰ですか?ブルース・リーって?」
若い人には話が通じない。物理的な距離よりも、ずっと遠い所にくうみん以外の人たちがいる。こうやって、何人かいるうちで、一人だけ話がかみ合わないというのは、まったくの一人よりもずっとずっと孤独を感じる。
打ち上げは2時間ほどでお開きになった。他の皆さんは、これから電車に乗って帰るそうだ。くうみんの家はここから歩いて10分程度。
「どうもありがとう。さようなら」
手を振って駅から遠ざかるくうみん。
これからはこういう席はどうしよう?こっちはまだ勉強と思えば、いいかも知れない。だけど、若い人には迷惑かも知れないな~。
年を取るのは順番よ。今その順番がここに来ただけ。今の彼らもそのうちに年を取っていく…
年を取らないのは亡くなった人。おじさん…
酔った頭でそんなことを考えながら、家路を急いだ。
次の日は同年代のオバ達を飲み食い会!!新宿の老舗中華料理屋にて。

茹でイカ

蒸し鶏

牛肉の醤油煮

水餃子。中華はこれがないと
やっぱ、話が盛り上がるって最高!!オバ仲間に感謝!!
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一月後には名古屋でハーフを走る予定。ちょうどいいウォーミングアップになるじゃないの?!そう思って参加を申し込んだ。
当日は競技場の最寄り駅で待ち合わせをすることになっていた。時間通りに行くと、インストラクターが一人、待っていた。聞くと他のメンバーはすでに会場に行っているという。
「すみません、遅くなって」
「いえ、まだ時間内ですから」
二つあるチームのうち、くうみんは遅いチームに割り振られていた。でも、きっと活躍できると信じ込んでいた。トラック一周800メートル。4分前後で走れるだろう。
「昔は速かったんですけどね」
「いえ、記録よりも楽しめばいいんですよ」
ふっふ、後になって彼は、私の速さに目を丸くするであろう。と、この時は思っていた。

マラソン会場
会場に着くと社長挨拶や、ウォーミングアップをしていよいよスタート。くうみんは3番走者だ。
前の人からタスキを渡され、くうみんはひた走った。しかし、おかしい。何でこんなに息が苦しいんだろう?800メートルという短い距離を走るというのに、途中から明らかに失速して行った。
その後の走りはひどいものだった。はじめのうちは一周5分くらいで、これでもひどいと思ったが、そのうち6分近くかかるようになった。年を取るってこういうものか?
抗がん剤の影響で、術後2年目に走ったハーフマラソンは2時間以上かかった。自己ベストは1時間36分30秒のくうみんは、それまで、2時間以上かかる人って歩いているんじゃないかしら?など思っていたのに。
自分で練習を工夫して、フルマラソンはサブフォーに復帰したけれど…
抗がん剤の影響は克服できても、年を取るのは克服できない。考えてみれば、これは自然の摂理。年を取ればどんな名選手も、引退を余儀なくされる。
おお!そうだ!池江瑠花子ちゃん!ということで、白血病は克服できるぞ!今は治療に専念するように!
さて。
くうみんは、おのが遅さに非常なショックを受けた。しかし、さらなる試練がくうみんを襲うことになる。
みんなと一緒に連れ立って帰った。電車に乗り込むと、席が空いていたので思わず座った。しかし、みんな向こうで立っている。誰もこっちに来ない。
いいわよ、私だって一人を楽しむことのできる大人なんだから…くうみんは荷物の中から本を出して読んだ。アメリカの小説、「緋文字」だ。アメリカでは推薦図書になるようなポピュラーな小説らしい。
みんなでこの後打ち上げをするという。食事の支度もしていないし、参加することにした。風呂に入って待ち合わせ場所に行くと、もうみんなが待っていた。3分ほど遅れたので、若干一名の目が厳しかった。すまん、遅れたのは悪かった。
参加者は7人で、近所のチェーン店の居酒屋に入った。席は隣同士で二つに分かれていたが、一つの席が先に埋まった。くうみんと女性イントラはその隣の席に向かい合わせで座った。遅れてきた男性会員は、その女性イントラの隣に座った。
くうみんの隣だけ人がいない…イントラと、オバ(あ)さん会員ならば、イントラの隣に座るのが自然と言うもの。でも…
初対面の人とも、気後れせずに自分から積極的に話の中に入って行くのも大事だよ…そういうアドバイスを某女からいただいたことがあったので、くうみんは、話に耳を傾け、あいづちを打った。なるべく話の中に入って行こうとした。
しかし、話がかみ合わない。
くうみんは断トツの年上で、次はアラフォーと思われる女性会員、あとは20代前半や、アラサーと思われる人ばかりだ。
フィットネスクラブのイントラと会員の話題は、やはり体をどうやって作っていくかということ。
「胸の筋肉としては前鋸筋が大事です」
など、アラサーのイントラが話し始める。この人は1987年生まれだという。くうみんが結婚したのが1985年なので、ちょうどこれくらいの子供がいるはずだ。しかし、彼はこの中でも年上の方。
前鋸筋か?そう言えばブルース・リーの前鋸筋はすごいって言ってたな?
前鋸筋と言うのは、胸の外側、わきの下あたりに付いている筋肉だ。くうみんはブルースリーの名前を挙げた。
「誰ですか?ブルース・リーって?」
若い人には話が通じない。物理的な距離よりも、ずっと遠い所にくうみん以外の人たちがいる。こうやって、何人かいるうちで、一人だけ話がかみ合わないというのは、まったくの一人よりもずっとずっと孤独を感じる。
打ち上げは2時間ほどでお開きになった。他の皆さんは、これから電車に乗って帰るそうだ。くうみんの家はここから歩いて10分程度。
「どうもありがとう。さようなら」
手を振って駅から遠ざかるくうみん。
これからはこういう席はどうしよう?こっちはまだ勉強と思えば、いいかも知れない。だけど、若い人には迷惑かも知れないな~。
年を取るのは順番よ。今その順番がここに来ただけ。今の彼らもそのうちに年を取っていく…
年を取らないのは亡くなった人。おじさん…
酔った頭でそんなことを考えながら、家路を急いだ。
次の日は同年代のオバ達を飲み食い会!!新宿の老舗中華料理屋にて。

茹でイカ

蒸し鶏

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