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盛りブラパンツ事件

 くうみんは下着をタイで買うことにしていた。ワコールやギラロッシュと言った高級品が、日本では考えられないくらい安く買えるからだ。
 しかし最近タイに行っていないので、もうそろそろ買い替えなくてはと思うようになった。近所の店で買えばいいのだろうが、なぜかこういったものは店で買うと高い。そこそこのもので3千円以上はするし、上下ペアにするともっと高くなる。通販が良かろうと、調べた。

 くうみんも寄る年波、若い頃なら張りのあったちちも、今ではテロ~ンと垂れ下がっている。どうにかならんかとあっちこっち捜すと、○ラデリスというメーカーのがいいらしい。しかし、これは1万円以上もする。女優じゃあるまいし、こんなもの使えるか!!

 ということでおなじみの楽天で良さそうなのを探した。
 垂れたちちに良さそうな「育乳」というキーワードで探すと、これは、と思うものは目についた。
「しっかりホールド!寝るときもスポーツをしても楽ちん」

 これだ、これを買おう。
 色違いと型の違うものを合わせて3点、上下セットで買った。
いつもはパンツと言っているものは、こんな時は気取ってショーツと言うらしい。パンツ、いや、ショーツはブラを3点買えば、一点プレゼントと言うので、2枚買った。来るのを楽しみに待った。

 ピンポ~ン。

 宅配便、キター!!

 くうみんはニコニコしながら荷物を受け取ると、封を切った。試着してみると、あら、ずいぶんと小さい。サイズ通りに選んだのに、変ねえ。
 電話をすると、お姉さんが一回目なら送料無料で交換してくれるという。
「こちらで品物を送りますので、今お手元にあるものは、そのまま置いていてください」
「うん、わかった」
 またまたくうみんは、次が来るのを楽しみに待った。

 二回目に来たのは入いりはしたが、何かもぞもぞした感じで合わない。これが楽ちんブラ?しかも妙にデカい。変だと思いつつ、お姉さんに電話をした。
「なんか、合わないみたいなんだけど」
「2回目の交換だと、片道分の送料をいただきますが」

 くうみんは考えた。このブラはくうみんの体に合わないので、これ以上サイズを変えても無駄だろう。なのでこれでいいということにしよう。1回目に送ってくれたブラはすぐに着払いで返送した。

 くうみんはこの妙にデカいブラを着けた。この合わないちち、これをブラに沿うようにすると…ボヨ~~~ン!
「なんなのこれは!!」

 ちちの下半分は完全になくなり、上にボヨ~ンとまん丸に突き出た。すごい上げ底だ。これが目的のブラなのだ。
 そう言えばみんなのレビューも、
「こんなに寄せて上げて感激~」
 のようなものばかりだった。

 これって男からすると、詐欺…

 間違えた。これは私の求めるものではなかった。

 考えても見て欲しい。おばさんのちちがみょーに元気だったら…それが本物なら立派だが、年甲斐もなく寄せて上げて叶姉妹バリのちちになっていたとしたら…

 あまりにあざとくて、フィットネスクラブで着替えをするのが恥ずかしかった。こんなのつけていたら、
「くうみんさん、無理しちゃって」
 と陰で言われるに違いない。

 もう身に着けてしまった2点は別として、あと1点はあまり寄せないタイプのものと交換して欲しくなった。
 
 くうみんはこの会社に電話をした。
「はい、○○です」
 会社名を名乗ったお姉さんに文句を言った。
「何よ、これは!!あんまり盛り過ぎで、恥ずかしくてフィットネスクラブで着替えができないわよ!もっと普通なのに替えてちょうだい!!」
「え~、でも、そうすると送料は往復お客様の負担になりますが」
「だって、2回目は片道って言ったじゃない!!」
「それはお手元に帰す品物がまだあった場合です」

 2着以上買うと1回目の交換は無料、2回目からは片道負担と言うことだったが、こういう意味だったらしい。

 ①初めにブラが到着する。合わない。会社に電話してサイズの合いそうなものを送ってもらう。
 ②合えばよろしい。そのまま不要な品物を返す。送料は会社負担。
 ③合わない場合は、その旨連絡。向こうから、合いそうなものを送ってよこす。それを試着して良ければ、不要なものを送り返す。この場合客側が負担。

 しかし、くうみんは2回目の交換までなら片道負担でいいということは、何があっても2回目までなら送料は片道でいいと思ったのだ。

「何よ、でもこの場合だって2回目の交換よ!!上を呼んでちょうだい」

 すると3、40代と思われる男が出た。男相手に下着の交渉とは、一瞬ひるんだが、ずうずうしいおばちゃんには羞恥心は邪魔なだけだ。ついに交換の送料は片道負担と言うことにしてもらった。

「お客様のような場合は、あまり寄せないタイプのものをお送りします」
「そう、で、確認なんだけど、それとセットのパ…ショーツも送ってくれるわよね、3点買うんだから」
「はい、わかりました」

 よかった。くうみんは、またまた来るのを楽しみに待った。
 
 ついにこれが最後のブラになるであろう、荷物が来た。
 試着してみると、これなら普通に身に着けられると思った。しかし…

 ない!あれほど恥ずかしい思いをして、くれるわよねと確認した、パンツが入っていない!!

「何よ~!約束が違うじゃない!!」

 くうみんは考えた。ショーツ、いや、パンツを送るよう、交渉せねば…
 
 しかし…くうみんにはその頃、そんな元気はもうなかった。

 前にも書いたとおり、「気ばかり焦って何もできない」状態であった。ああ、確定申告…ああ、ブラとパンツ…そしてブラック内職のゆくえ…

 元気がないところにこの仕打ち、何もかも面倒になったくうみんは第2希望で手を打つことに決めた。
 
 くうみんはその会社に電話を掛けた。
「はい、○○です」
 電話に出たお姉さんに、くうみんは脱力した声を出した。
「この間、男の人が新しく送ってくれるブラとおそろいのパ…ショーツもくれるって言ったのに、入ってなかったのよ」
 くうみんは言葉を切った。お姉さんも何か異変を感じたようだ。
「…はい」
「でもね、もうブラだパンツだっていうのが疲れてしまったの。もう、どうでもいいから、使ってないブラと、今回来たブラ、返すから、おカネ返してくれる?」
「わかりました」
 きっと会社側も、
「うるせ~客だからあまり相手にしないように」
 と指示を出したのだろう。こちらの願いをあっさり聞いてくれた。

 それからすぐに返すべきブラとパンツを箱詰めし、近くのコンビニで送り返す手続きをした。

 戦い済んで日が暮れて…でも、ひとつ解決、荷が軽くなったくうみんであった…

 

 


 



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 病んだ乳を抱えて今を生きる。また走り始めた。涙を流しながら。

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