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ガン友死す 願わくは 花の下にて 春死なむ

 その人とは、くうみんがブログをはじめて割とすぐにブロ友になった。今はfc2だが、その当時は楽天ブログだった。
 同じ楽天ブログをしていたその人とは、お互いコメントをしあっていた。そのうちくうみんが楽天を離れると、楽天のブロ友はあまりこのブログを訪問しなくなったのだが、何人かは時々このブログを覗きにやってきた。 

 その数少ない楽天からのブロ友が、月兎のつぶやきさんだった。ブリザードフラワーの先生をしていて、作品を通販でも販売している。センスのないくうみんからすると、羨ましいような美的才能のある人だった。
 
 その人が、乳癌になったとメールが来たのは1年半くらい前だったか。もう3期に入っているので、抗がん剤でガンを小さくしてから手術すると言っていた。
 手術は無事に終わり、転移も見られなくて一安心したようだった。

「くうみんさんは、食事に何か気を付けていることはありますか?」
 癌になってから食事に気を使うガンサバイバーは多い。くうみんの場合は、牛乳は飲まないし、乳製品もなるべく摂らないようにしているくらいで、そんなに気を使っていない。
 
 人によっては豆乳は女性ホルモンに構造が似ているから摂取すべきではないという人もいるが、これもいろいろ調べた結果、くうみんとしては、豆乳はむしろ摂るべきとの結論に至っている。

 一言で乳がんと言っても様々な形があって、エストロゲン、プロゲステロンという2種類の女性ホルモン陽性、ハウツー陽性であるものをトリプルポジティブ(トリポジ)、女性ホルモン陰性、ハウツー陰性であるものをトリプルネガティブ(トリネガ)と言うが、両方とも単にホルモン陽性であるがんと比較すると進行が早い傾向にあるようだ。
 もちろん、トリポジやトリネガでも10年以上再発せずに無事に暮らしている人もたくさんいる。

 月兎のつぶやきさんは、トリプルネガティブだった。

 しかし、この人ほど進行が速い乳癌をくうみんは聞いたことがない。
 今から一年半ほど前の秋、ガンになったと知らせがあってから、そのまた半年くらい経って骨や肺に転移が見られたという。それでも月兎のつぶやきさんは希望を捨ててはいなかったように思える。

 そして3月も下旬に差し掛かった時に、ついにこんなメールが届いた。
「もう治療ができないので、緩和病棟に移ることになりました」

 緩和病棟は治療法がなくなった患者が、苦痛を取り除くことを主な目的として入院するところだ。こんなに早く…

 迷惑でなければ今度、お見舞いに行きたいとメールをすると、ぜひ来てくださいとの返事。共通のブロ友のフネさんと共に4月9日から行くことにした。
 新幹線の切符やホテルの手配をしてその日を待っていたが、
「9日まで持たないかも知れない」
 という連絡が某日夕方にあった。

 翌朝、病院に電話をして、お見舞いに行ってもいいか確認すると、来て構わないと本人が言っている、とのことなので、その足ですぐに目的の京都へと向かった。

 新幹線の自由席は、無事に座ることができた。こんな時はサンドイッチをつまみにビールを飲むところだが、今はそんな気にもならず、ただ鬱々と窓の景色を見ていた。

 月兎のつぶやきさん、どうか持ち直して欲しい。がんがなくならないまでも、うまく共存できればいい。

 京都駅から病院のホームページで調べた通りの電車に乗った。最寄駅から送迎バスが出ているので、それに乗って病院を目指した。

 緩和病棟のナースセンターにお見舞いに来たことを伝えると、面会してもいいかと患者と家族に確認していた。
「こちらです」

 案内された病室に入ると、くうみんと同じくらいの年の月兎のつぶやきさんが横たわっていて、近くにはご子息と娘さんが立っていた。ご主人は部屋の片隅でハンカチで目を押さえている…

「月兎のつぶやきさん、くうみんです」
 ベッドの前の食卓には少し手を付けたミカンゼリーがあった。口からものを食べられるのか?だったら、大丈夫なんじゃないか?

 実はくうみんが月兎のつぶやきさんと会うのはこれが初めてだ。でも、ブロ友ってコメント交換やメールのやり取りをしていると、初対面であって初対面ではない、不思議な感覚があるのだ。
 街中で待ち合わせをしていても、すぐにあの人だ、と分かる。

 月兎のつぶやきさんは、個人的なブログも持っているが、ブリザードフラワー教室のブログも持っていて、そこにはお花に囲まれた彼女が微笑んでいる。美しいその人が、病にやつれていた。

 あまりいると疲れてしまうだろうからと、5分か10分くらいで病室を出たが、その後、廊下でご主人と2、30分くらい立ち話をした。

 乳癌は進行が遅いと聞いたのに、うちのだけがなぜこんなに速いのか?いろいろ治療法があると言っても、歩けないのでどこにも連れて行くことができなかった…

 ご主人もあまりの進行の速さに、対処しきれなかったようだ。
「一時は本当に危なかったんですが、今は落ち着いているんです。くうみんさんが来る、くうみんさんが来るって、それはもう楽しみにしていました」
「そうですか、それは光栄です。また持ち直すかも知れません。わからないものですよ」
 ご家族もお体を大事になさってくださいと言って、その場を辞退した。

 朝から何も食べていなかったが、あまりお腹が空かない。でも、せっかくの新幹線なので、駅構内のセブンイレブンでチューハイとサンドイッチを買った。
 車内でサンドイッチをぱくつきながら、チューハイを飲んだ。いつもなら楽しい道中だが、今回は暗い。持ち直したとしても、命ながら得る訳ではない。せいぜい数日のことだろう。

 とんぼ返りで家に到着。残り物で夕食を済ませると、早々に寝てしまった。

 翌日の朝。
 8時くらいだろうか、携帯が鳴った。
「はい」
 月兎のつぶやきさんのご主人からだ。今朝4時くらいに身罷ったという。こんなに早く?信じられなかった。
「そうですか、残念です」

 もう何人のガン友を見送ったんだろう。
 この病気になると、こんな別れに遭遇することが多いのは確か。

 一口に癌と言っても、それぞれに形が違っていて、こんなに進行の速い乳癌もあれば、何十年も再発しないで、再発した時は80、90の天寿を全うしたと同じくらいの期間だったりもする。

 ご主人の嘆きようは、大変なものだった。おじさんがもし、私を看取ることになったら、きっとあんなふうなんだろうな。

 死別の人はこんなことを言う。
「残されるのがこんなにつらいことなら、残されたのが私で良かった。あの人にこんなつらい思いをさせるなんて、私にはできない」

 うん、残されるのは悲しくてつらい。

 ご主人、愛する者との死別の悲しみ、身を切るようなこの悲しみを、自分が受け持ってあげる…そう思いましょう。

 京都は桜が満開だった。

 願はくは 花の下にて 春死なん その如月の 望月の頃

 月兎のつぶやきさんにこの歌を奉げます。



  

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 年齢一億歳。
 
 病んだ乳を抱えて今を生きる。また走り始めた。涙を流しながら。

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