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愚かな女房がしてしまった取り返しのつかない事

 昔々あるところに秤士の男がいた。

 秤士と言うのは農園の収穫と使った費用や労力を評価し、年貢を計算する仕事だ。仲のいい夫婦だった。秤士は資格がないとできないので、女房は
「あんたに万一のことがあったらどうすればいいんだい?」
と聞いた。秤士の男は
「AさんとBさんに相談しなさい」
と言った。

 二人は幸せに暮らしていたが、ある日、秤士の男は急死してしまった。女房の嘆きは計り知れないものだった。しかし、悲しんでばかりもいられない。葬儀の手配や何やら、次から次へと仕事がある。

 そして手がけている農園の年貢治めの期日が迫っていることに気付いた。
「急がないと農園主に迷惑がかかる!!」

 あわてた女房は、亭主から、
「万一の時はAさんとBさんに相談するように」
 と言われたのを思い出した。

 取りあえずAの所に農園のリストを持って行き、
これをAさんとBさんとで分けてください
 と言ってしまった!!

 そう、聡明な読者ならすぐ気づくだろうが、亭主は
「AさんとBさんに相談するように」
 と言ったのに、気が動転している女房は
「AさんとBさんで分けてください」
 と言ってしまったのだ。

 リストを手渡されたAは小躍りした。昔なら字が書けない者がざらにいたのだが、最近は皆、寺子屋で読み書きとそろばんくらいは身につけている。自分で年貢を計算する輩が増えて、客も先細りだ。
「この農園をすべて自分の客にしてしまおう」

 Aは農園の権利独り占めを企て、Bには農園を分けようとしなかった。それを知った女房は独り占めは許さないと、Aの家に押しかけ、リストを奪い返すと、それをBに手渡した。

 めでたしめでたし…と思ったが、女房は少し落ち着いてハッと気づいた。

「亭主は、AさんとBさんに相談するように言っただけだ。それを私は二人で分けてくれと言ってしまった。わたしは亭主が営々と築いてきたものを一瞬にして人手に渡してしまった…」

 どうせならもっと人柄のいい秤士に手渡すべきだった。

 Aは、独り占めを図ったし、正義の味方面してあとから現れたBは、亭主の仏前に線香一本供えに来ない。親戚にも秤士はいたではないか?!あの性格も良くて頭のいい子にあげればよかった!!

 しかし、今更お客さんに他の秤士にしてくれとも言えない。迷惑をかける。

 それに自分がどうあれ、お客さんが満足してくれればそれでいいではないか…女房はそう自分に言い聞かせて諦めるしかなかった。


  



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 病んだ乳を抱えて今を生きる。また走り始めた。涙を流しながら。

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