ちょっと嫌な話

 不幸に陥ると、いい人と悪い人が見えてくる。普段いいと思っていた人が実は悪い奴だった、と良く言うが、実にうなずける今日この頃である。

 人間は欲に囚われると、こんなにも恥知らずになるのか、強欲と言うのはこんなにも醜いものなのかと思わず目を背けたくなった。
 いや、詳しくは言えない。

「おじさん、うちはどうしてこんなに顧問先が少ないの?他の事務所はどうしてあんなに人を雇ったりできるの?」
「さあ、どうしてかね、でも食べていけるんだからいいじゃないか」
 くうみんはちょっと間をおいて答えた。
「そうだね、おじさん」

 おじさんとくうみんのありし日の会話。

 くうみんはおじさんに頼り切っていた。今思うとおじさんとは夫婦と言うより親子、飼い主とワンニャンのような間柄だったかと思う。
 箸の持ち方もおじさんから教わったくらいだ。

 おじさんはこんなことをしない。人の弱みにつけ込んで、こんなことはしなかったから、うちは行列のできない税理士事務所だったのだ。
 でも、それでいい。

 死んだ人の確定申告は死後4か月後きっかりの日までにしなければならない。これも大変だ。人任せにすれば簡単だろうけど、くうみんがしてみせる。

 おじさん、よろしくご指導ください。他の誰にも頼りたくないの。 



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テーマ : 生き方
ジャンル : ライフ

北斗晶さんが乳癌ですって!久々の癌記事 

 もうちょっとブログを書くのは休んどこ、と思ったら北斗晶さんが乳癌をカミングアウト。今日24日手術をするという。しかも全摘。

 くうみんブログはもともと乳癌ブログだった。それがお気楽専業主婦ブログになり、そして悲しいことに死別、一人暮らしブログになった。

 久々に、はぐれ患者の血が騒ぐ。

 乳房全摘に対する気持ちは人によって全然違う。普段隠れているからどうでもいいと言う人もいれば、絶対に嫌だ!と言う人もいる。北斗さんは、何とか温存手術で行けないかと、あらゆる方面に打診したという。しかし、全摘はやむを得ないものと主治医から説得されたようだ。

 くうみんの場合、初めは温存で済んでやれやれと思ったら、詳しい病理検査の結果、たくさんの取り残しがある上、おびただしい脈管侵襲があると言われ、全摘の再手術を勧められた。くうみんは全摘なんて絶対に嫌だった。

 くうみんもこの時、北斗さんと同じように、このまま温存できないかとあっちこっち聞きまわった。他の病院の放射線科に行って、セカオピをお願いした。医師と言うのは自分の得意科目で意見を言うものだ。だから主治医と同じ外科ではなく、放射線の先生に聞けば、また違った意見も聞けると思ったからだ。
 結果は主治医と同じ意見。全摘やむなし。しかし、あなたがしたくないなら断ればいい、と。
 重粒子線で治療できないかと、千葉大附属病院に問い合わせもした。こっちも乳癌は適用ではないとあっさり却下。
 
 再手術するしかないと、暗たんたる思いだった。手術のことを考えると瞼がピクピク痙攣し、通院している病院に向かうと心臓がドキドキした。

 手術しなければどうなるかな~、死んでもいいから手術するのやめようかな~…そう考えると不思議なことにまぶたのピクピクは治まって行った。いろいろな偶然が重なって、再手術はしないことにした。

 だからくうみんの体には癌細胞が残っていることになる。でも、もう術後7年経った。早いなあ…あの頃は医者の言うことを聞かなければ死ぬものと思っていたけれど。

 その後、悪い頭をフル回転させて、図書館の本を読み漁ったり、ネット検索して調べたが、どうやら癌治療と言うのはいまだ不確定なものらしい。

 だから北斗さんが、そんなに全摘が嫌なら、手術しないという選択もありだと思う。
 
 それに、ガンと言うのは他の病気と違って自分の細胞が変化してなるものだから、取ってしまえばそれでいいというものではない。

 むしろ手術で体力がなくなる方が良くない場合も考えられる。癌をうまくコントロールするのは、生活習慣と体力勝負の側面もある。ガン予防と言うと、食事を思い浮かべるが、運動も大事だ。

 くうみんはマラソンで体を鍛えていた。抗がん剤治療(やってしまって後悔している)中も、質、量ともに落としてだが、ランニングと筋トレを続けた。
 そのせいか、他の癌友より血管も固くならず、抗がん剤の後遺症もましな方だ。抗がん剤の後遺症はひどいものだ。足の痺れが10年経っても治らないと言う人もいた。

 くうみんは通常5年続けるホルモン剤の服用も2年半でやめた。皆は6か月に一度受ける術後検診も、術後第1回から断った。マンモグラフィーその他の放射線が怖いからだ。しない方がいいと考えた。

 北斗さんは毎年乳がん検診を受けていたと言うが、検診では見つからなかった。検診は無駄なのか?くみんは無駄だと思う。他の癌友も、自分で見つけた人が大半で、検診で見つかったと言う人は知っている限りでは一人だ。

 どうも検診では「この人はガンではない」と言う前提で検査するので、判りにくいのではないかと思う。くうみんもどうやってしこりに気づいたかと言うと、朝起きるときに偶然胸に触れて、違和感があったからだ。

 自分で見つける簡単な方法を伝授。 
 お風呂に入ったときに体を洗うついでに、石鹸をつけた手で円を描くように撫で、上下に線を描くように撫で、左右に線を描くように撫でる。しこりがあるとこれでだいたいわかる。

 しこりのない乳癌もあるので、腕をあげたり体をねじったりして胸にゆがみやひきつれがないか確認する。
 これで異常が見つかったら病院で検査する。「異常である」と言う前提でする検査は、やはり精度が違う。良性の場合も、もちろんある。

 もし、悪性だったら、治療するのもしないのも、医者任せにせず、自分で決めるべきだ。






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テーマ : 乳がん
ジャンル : 心と身体

法要外伝  霊能師兼日蓮宗尼僧照玉師来たる

 49日の法要はブロ友でもあるドジ霊能師照玉師にお願いした。49日を3日遅れての日程だったが、本職がこの日でもいいというのだから、いいのだろう。
 お経をあげてもらって、お昼ご飯を食べるのだが、外に出ていくのは面倒なので出前を取ることにした。
「お寿司は食べられますか?」
「口を大きく開けられないので、にぎりは無理。だけど海苔巻やちらしなら大丈夫」
 と言うので、かんぴょう巻きとかっぱ巻きを頼むことにする…のではなく、照玉師には特上ちらし、他は特上にぎりを注文することにした。

当日はおじさんのお姉さん方も出席してくれた。長い長いお経で、すっかり足が痺れてしまった。終わった時は本当にホッとした。
「ささ、照玉師、こちらへ。昼食の支度がしてございます」
 4人で食卓を囲む。
「くうみんさん、魚が新鮮でおいしいわね」
 ドジ霊能師照玉師は口が開かないという割には大口を開けてちらし寿司をお召し上がりになっている。
「はあ、この辺は海の近くですからね。大垣は海、ないんですか?」
「ないのよ、だから魚と言えばアユやウナギ」

 くうみんは大事なことを思い出した。
「照玉師、忘れないうちにお布施を」
 くうみんは封筒に入れたお布施を渡した。照玉師はいそいそと封筒をバッグにしまった。
「忘れる人もいるんでしょ?」
 席に戻ったドジ霊能師、照玉師は再び箸を持ちながら言った。
「いるわよ、でもこちらから催促はできないのよね」

 そんな時はどうするのだろうか?
「う、ごほん、んっ、んっ」
 などと言って、それとなくわかるように仕向けるくらいしかできないだろう。

 照玉師は5時から仕事だという。
「Kに行きたいんだけど、どう行けばいいのかしら?」
「Kですか?」
 お姉さんがスマホで調べて結果を見せた。
「お姉さん、ダメです、そんなのすぐ忘れます」
 くうみんはパソコンを開いて行き方を検索し、プリントアウトした。
「これ持って行けば大丈夫」
 照玉師はくうみんが渡した紙を見たが、
「ダメ、見えないわ」

 それはこのくうみんにもよく判る。若い頃なら絶対に理解できない、近くのものが見えない現象…くうみんはマジックで乗換駅や、何番線発着なのかを、大きく書いて手渡した。
「いいですか、この通りに行くんですよ。わからなかったら駅員さんに聞いて」
「これならわかるわ」
 ホントカヨ。

 東京の地下鉄は覚えるのは難しい。駅に着いてから案内を見て目的地に行く。何と言っても照玉師はドジ、いや、地方からおいでで、その上800才と言う高齢、公共の交通機関を乗りこなすのは至難の技であろう。
 
 照玉師はfc2にコメントが書けない。
「何よ、このメールアドレスとかナンタラって」
「それは書かなくていいんです。こうすればいいんです」

 手取り足取り教えて差し上げるが、年配者がよくする、マウスを動かし過ぎてカーソルの位置が判らなくなるという状態を長く続ける。
「そんなに大きく動かさないで!ああっ!もう!」

 この方の地元でのパソコン指導は「マネージャー君」がしてくれるらしいが、「マネージャー君」の気持ちがよく判る。きっとくうみんと同じようなことを叫んでいると思う。

 お姉さん方はほどなく帰って行った。二人で談笑していると、照玉師の携帯が鳴った。
「あら、金ちゃんだわ」
 なんですか、金太郎さんとテレビで仕事をすることが時々あるらしい。マイナーなBSやケーブルテレビの出演だが、せめてテレビ東京の旅番組に出るくらい出世して欲しいものだ。その時はくうみんも連れて行って欲しいが…無理か。

「もうすぐ出ます。はい、大丈夫です」
 向こうも、照玉師のドジが性格が判っているのか、確認の電話だ。

「照玉師、送りますよ~」
 くうみんの家は駅から1分もかからない所にある。くうみん母ですら一人で行ける。しかしこの方の場合は、反対側に行ってしまいそうで怖い。
「ありがとう」
 荷物を持って照玉師が立ち上がる。 
 駅まで送って反対方向に乗らないよう、確認してから家に戻った。

 家に帰ると、おじさんの骨壺を抱いて目をつぶる。
「おじさん」

 おじさんが遠くに行くのは悲しいけれど、いつか必ず会える時が来ると信じています。だから早く天に登って、高い位の霊になって、くうみんを見守ってください。

 今日のお経はどうでしたか?くうみんからのプレゼント。

 
 



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テーマ : ◇つぶやき◇
ジャンル : ライフ

買えない私

 食生活にいつもと違う違和感を感じた。食事は毎日自分で作っている。おじさんがいる頃は、お昼ご飯を食べているときに、
「今日は何を食べる?」
「そうだなあ」
 と相談して、メニューを決め、食べ終わるとくうみんは近くのスーパーではなく、遠くて安いスーパーに買い物に行っていた。

 おじさんは自宅を事務所として使っていたのでおじさんとくうみんは一日ずっと一緒にいた。
「あなた方は生まれる前に、おじさんが短命だということが判っていたの。だから一緒にいる時間を密にしようとしたのよ」
 照玉師が言っていたけど、本当にそうなのかもしれない。
 
 おじさんがいるときはおじさんの好きなものを優先して作っていたが、今は「ひょっとしてまずいかも知れない」と言うような冒険もするし、エスニックに挑戦することもある。一人暮らしとしては充実した食生活なのではないかと思う。

 しかし、おじさんがいた頃は月に3、4回外食をしていた。安くておいしいと評判の中華屋さんや、焼肉屋、そして寿司屋。寿司屋は回転寿司ではなくて、庶民がたまに贅沢をするための普通のすし屋に行っていた。そして月に一度は温泉一泊旅行。そこでも出て来た食事に舌鼓を打ち、かなり外で食事をしていたと今になって思う。

 でも、一人になった今、外で食事をすることもないし、温泉旅行にも行っていない。中華屋さんは量が多いので一人では入れない。焼肉屋や、寿司屋は値段もあるが、一人で行くのは敷居が高い。出前も一人前だとしてくれない。
 旅行も一人で行けるところは限られている。

 と言うことでたまには贅沢をしたいと、いつも行くスーパーで国産牛のステーキ肉でも買おうと肉売り場に行った。
 そこには分厚く切ったヒレやロースの肉が並んでいた。すき焼き用の肉は霜降りでおいしそうだ。
「どれがいいかな…」
 くうみんは肉を物色した。

 でも、買えない!買えないの!

 100グラム580円!680円!これでもまだ上には上がある!値引き品はないかしら?せめて20%オフとか…ない!だめ!こんな無駄遣い!

 くうみんは牛肉売り場を後にした。鶏肉売り場に行くとくうみんが好きな「キンカン卵」が安くなっていたので、これを買った。

 キンカン卵はそれだけを醤油と砂糖で甘辛く煮つけるのが正しいらしいが、くうみんの場合はこれに大根やいんげん、タケノコなどを一緒に煮て、わりと薄味に仕上げる。筑前煮の鶏肉をキンカン卵にしたバージョンだ。くうみんはこれが好きで、良く作った。
 おじさんが亡くなった夜もこれを食べて寝たんだっけ。
 
 今日、9月19日はおじさんの誕生日だ。生きていれば59歳。おじさん、おめでとう…って、おじさんはもう年を取らないんだね。

 今日は、でも、おじさんの誕生祝と言うことで、何か贅沢をしてみたい。牛肉が買えるかな?マグロのトロが買えるかな?

 おじさんはあまり牛肉は好きじゃないって言っていたけど、あれ、本当だったの?高いからそう言っていたんじゃないの?高いものに手が出せないなんて、似た者夫婦だったね。

 今日こそは買えるかなあ。いざ出陣!




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テーマ : ひとりごと
ジャンル : 日記

友ではない人たち 遠方より来たる また怒り起こらずや

 3人の女性が、わざわざおじさんのお参りに来てくれた。
[ありがとう、嬉しいわ。さ、入って入って」
 おじさんの祭壇に案内すると、みんな手を合わせてくれた。
 テーブルにお茶を用意して飲んでいると、そのうちの一人が言った。
「くうみんさん、おじさんは人に言えない死に方をしたって言っていた人のことだけど…」
 くうみんはまゆをひそめて言った。
「うん、許せないでしょ?」
「じゃなくって、あの人はそんな人じゃないわ」
 3人ともうんうんと言うようにうなずいた。
「きっと心配で心配で、そういう表現になってしまったんだと思う」

 他の皆さんも同意見だ。普通の人はああいうことを言われたら、そういうふうに考えるものなのか?それともこの皆さんは高潔な魂の持ち主なのか?

「負の考えは何ももたらさないどころか、悪いことを引き起こすことになるわ。人を憎むのはやめて」

 私だって彼のことはいい人だと思っていた。その言葉を聞くまでは。しかしな、非常時に人間性は出てくるものだ。他にも人格を疑うような人間がいた。付き合う人間はこういう時に選別するものだ。

 憎むもなにも、彼に対し、そんな感情を持つのすら嫌なので、くだらない人間のことは考えないように心がけた。私の知らない、別の世界で生きてくれと思うだけだ。忘れたい、死者を鞭打つような真似をする奴らのことは。

 だから最近、ブログを、昔の調子に戻したというのに、寝た子を起こすようなことは言わないでくれ。

 その後は当たり障りのない話題を振って、帰ってもらった。

 高潔な皆さんだ。凡人のくうみんにはとても真似できない。キリスト様もお釈迦様もモハメットもそして孔子も真っ青な清らかな魂だ。
 きっと自分の夫が亡くなった時に、私が「あの人の旦那、人に言えない死に方をしたらしいわ」と言っても、くうみんさんはいい人だから、と許してくれるのだろう。ありがたいことだ。

 近所に住んでいても、心の接点のない人は「遠方」なのだよ。遥かアンドロメダのかなたまで帰ってくれ。

 はい、これまでよ~。
 




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テーマ : ひとりごと
ジャンル : 日記

葬式外伝 さっさか終わらせよう告別式 

 葬式で一番偉いのは喪主である。喪主は葬儀屋さんの指示に従い、参列者の皆さんを引率するという重要な任務がある。

 くうみんはせっかちなので、葬儀屋さんの指示があると先頭に立ってさっさか歩いて行った。よく集団だとなかなか進まないことがあるが、あれはイラつく。

 告別式が終わり、おじさんが焼き場に納められ、食事のため、控室に向かうときも、さっさか歩いた。くうみんがさっさか歩くとみんなもさっさか歩き、式は大変効率よく進んで行った。
 一時間半もすると、「焼けました」と、お知らせがあり、またさっさか歩いて目的地に向かった。
 
 おじさんの骨を拾って、骨壺を手渡された。おじさんの骨の入った骨壺はすごく重くて、ずっと持っているのは大変なので、時々男性親族に交代してもらった。骨壺の重さを、後で測ったら6.9キロあった。重いはずだ。

 家に着くと、葬儀屋さんも来てくれて白い祭壇を組み立てておじさんの骨壺と遺影を安置、両脇に花を飾ってくれた。
「支払ですが…」
 支払金額はなんと見積もりより安かった。
「思ったより早く終わったので会場や控室の使用料が少なかったからです」
 と、葬儀屋さんは説明してくれた。
 皆さん、葬式ではさっさか歩きましょう。少しでも安く上げるように。

 しかし葬儀屋さんのイメージも随分変わったものだ。昔はさえないおやぢが葬儀社の社員と決まっていたのだが、担当してくれたWさんは30代と思われるすらりと背の高いかっこいい人だし、女性の化粧師も若く、笑顔の素敵な人だ。
 映画「おくりびと」の影響だと思う。

 おじさんの亡くなった7月6日は私たちの入籍記念日だ。うちには結婚記念日が2つある。一つは結婚式をした日、もう一つは入籍した日だ。
「入籍した日に死ぬなんて因果なものよのう、おじさん」
 あの日旅行に出かけるおじさんに、
「今日は結婚記念日なんだよ」
と言ったんだっけ。
 
 おじさんは旅行先で亡くなった。貴重品はもちろん返されたが、うちに戻ってこなかったものがある。

 クーラーボックスを縛り付けたキャリーカート、通称カラカラ。中には強力保冷材とビールが入っている。
 旅行用の下着。これは山用品の店で買った優れもので、汗だくになってもさらっと快適なので、おじさんは旅行には必ずこれを身につけて行った。
 そしてくうみんが西友で買った大判の傘。

 おじさん、お気に入りの衣装で、カラカラ引いて、傘持って、長い長い温泉旅行に一人で行ったんだね。
 くうみんがそっちに行くときは、迎えに来てね。
 旅行にいつも持って行くグレーのリュックに、おじさんの好きなピーナッツと、めざしの焼いたのでも持って行こうか?

 おじさんの骨壺を抱きながら、共に暮らせる日を思う。
 そう長生きはしないと思う。だって私はガン持ちだから。死に別れブログの人達、どうだ、羨ましいだろう。

 本当だよ。死に別れの人達は皆、早く一緒に暮らしたいと思っているんだもの。






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テーマ : ひとりごとのようなもの
ジャンル : 日記

葬式外伝 葬式打ち合わせからお通夜まで

 伝記には正伝と外伝がある。正伝とは物事の本筋を伝えるものであり、外伝と言えば物事の裏話を言う。

 おじさんは無事家に運び込まれ、生前寝ていた布団に寝かせられた。好きな服があったらそれを着せると言うので、細身のジーパンとユニクロのボタンダウンのシャツを着せてもらった。旅行に行くとき、この格好で行くことが多かった。

「お召替えが終わりましたのでどうぞ」
 葬儀ディレクターWさんが言うので見に行った。
「何やっているのよ!」
「こんなに早く、まったく!」
 お姉さん達は泣きながら文句を言った。くうみんはひたすら泣いていたことしか覚えていない。

 打ち合わせはすぐに、おじさんのお姉さん達と一緒にWさんと女性の化粧師を交えて5人で行われた。

 初めは家宗のカトリックでしようとしたが、神父様の都合が付かず、無宗教ですることにした。プロテスタントの牧師様はたくさんいらっしゃるけど、カトリックの神父様は少ないらしい。本人も信心していた訳ではないので、これでいいと思った。

 無宗教だと、お願いした葬儀社、さくら葬祭では音楽葬にしてくれる。Wさんが尋ねた。
「音楽は故人にちなんだものを演奏します。故人の好きなものはなんでしたか?」
「酒と温泉です」

 ♪ババンババンバンバン ババンババンバンバン いい湯だな、ハハン…♪

 さ~ぁけはぁ飲めぇ飲め 飲~むぅ~なぁらぁばぁ~…

 シャレにならない。

 一瞬の沈黙の後、Wさんが再度質問してきた。
「何かかけたい言葉はありますか?」
 くうみんは泣きながら答えた。
「このバカ、です」
 お姉さん方も口をそろえて言った。
「そうよそうよ」
「…」
Wさんは困ったのではないか。

 Wさんは、そうだ、と言う顔をして尋ねた。
「それでは何か好きな音楽はありましたか?」 
 おじさんは音楽は好きだった。ラテン系やシャンソンか、くうみんはそこのところ疎いのでよく判らない。長谷川きよしが好きで、以前はよくライブを聴きに行ったものだ。
「長谷川きよしが好きでした。特に別れのサンバ」
「そうですか」
 Wさんはほっとしたような顔をして言った。音楽は葬式にふさわし曲(たとえばいい日旅立ち)をメインに好きだった曲を少しずつちりばめて演奏されるという。
 通夜ぶるまいの料理や引き出物を頼んで打ち合わせは終了した。

 お通夜は市の斎場で行われた。おじさんが若くして亡くなったからか、弔問客は一様に厳しい顔をしていた。
 内輪に、と思っていたのだがうわさを聞きつけて予想の倍くらいの人が来てくれた。嬉しく思った。しかし、通夜ぶるまいの料理が足りなくなった。皆さん、すみません。おなかすいたでしょ。今更追加注文はできないので、現役世代で亡くなった場合は料理は大目にした方がいい。  

 通夜ぶるまいの会場に、おじさんの写真アルバムを置いていたのだが、これで結構盛り上がったらしく、思い出話に花を咲かせている一団もあった。

 明日の告別式は10時から。斎場には寝泊りするところがあったので、そこにお姉さん2人と姪一人、くうみんで泊まることにする。隣はおじさんのいる葬儀会場だ。夜中に何度もおじさんの顔を見に行った。

 顔の所だけ窓が開いて、窓に触ると冷たい。ドライアイスが効いているのか。

 おじさん、明日は告別式だ。それが終わったらおじさんは焼かれて骨になっちゃうんだね。

 さびしいよう、悲しいよう。

 山奥にあるせいか、蚊が多く、電気蚊取りが欠かせない。斎場の方も判っているので部屋には電気蚊取り、その他の場所には蚊取り線香の煙が充満している。

 こぼれる涙は蚊取り線香の煙のせいか、悲しみのせいか…

 足がかゆいのは蚊に喰われたせいだ。







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テーマ : ひとりごと
ジャンル : 日記

おじさん、どこへ行ったんだぁ~?くうみんは専業主婦じゃなくなったよ。

 おじさんは待望の友達との温泉一泊旅行を目の前にしてとっても嬉しそうだった。遠足を楽しみにしている小学生みたいにしていた。

 真夜中に、突然の電話に起こされた。おじさんが大変なことになった、死ぬかも知れないと、切羽詰まった声で知らせてきた。

 まさか、まさかね。だって昼の11時くらいに出て行ったときは、
「明日の昼は海鮮丼を食べるから夕飯はご飯じゃないのね」
って、元気に出て行ったじゃない。だから私は、うどんやソバは家にあるからいい、パスタ類がないから買って置かなきゃと、スーパーでマカロニとスパゲティを買ったんだもの。これで明日は目に着いた材料でどれを食べるか決めればいい。そんなことを考えていたのに。

 病院に着いたとき、おじさんは固いベッドに横たわって、微笑んでいるような安らかな顔をして目を閉じていた。体幹はまだ温かいけれど、指先を触ると、冷たくなっていた。もう死んでいるんだ。あっちへ行ってはいけないと言ったけど、遅かった。

 おじさんの残した巾着袋の中に、昼に買ったお弁当のレシートがあった。時刻まで印字されていて、きっとこの時は楽しい温泉旅行を前に、ニコニコしていたんだろう。そう思うと泣けてきた。この巾着袋を見るのはいまだに悲しい。だけど捨てることもできない。引き出しの中にそっとしまってある。いつかは優しい笑顔で見ることができるだろうか。

 こんなことって、自分とは違う世界のことだと思っていた。おじさんがこんなに早く死ぬなんて。私がこんな不幸のどん底に落とされるなんて。

 もっとこの幸せが続くと思っていた。こんなに早くおじさんが逝ってしまうなんて、思っていなかった。だって、私はガンだから。取り切れなくて再手術を勧められた。「再手術をしなければ、俺は主治医を降りる!」とまで言われたけど、断った。だから私はガンと共に生きている。
「最後まで楽しければいいよね」
「そうだね、おじさん、楽しいねえ」

 二人で旅行に行ったりおいしいものを食べに行ったり。

 最後まで楽しければいい。おじさんは確かにそうだろうけど。おじさん、早過ぎるよ。私が死ぬのは覚悟できていたけれど、おじさんが死ぬのは覚悟できていなかった。

 先に逝くのは私だと思っていた。




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ひねくれくうみん

Author:ひねくれくうみん
 年齢一億歳。
 
 病んだ乳を抱えて今を生きる。また走り始めた。涙を流しながら。

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